TGS2025でわかった次世代ゲームの流れ:AIとクラウドが変えるゲーム体験

2025年の東京ゲームショー(TGS2025)は、従来の新作タイトル発表だけでなく「技術トレンド」が色濃く出た回だった。特に“ジェネレーティブAI(以降GenAI)”と“クラウド”が、開発現場のワークフローからプレイ体験そのものまでを急速に変え始めていることが現地・配信の情報から鮮明になった。この記事ではTGSで見えた主要な動きを、現地発表や業界レポートを参照しつつ整理する。

TGS2025の全体像 — “AI×クラウド”が今年の主題に

今回のTGSは規模が大きく、出展企業やステージ配信も豊富だったが、会場のトーンとして「AIを取り込んだ制作/表現」と「クラウド基盤による配信/体験の拡張」が繰り返し示された。主催側や報道でも、開発現場でのAI活用が増えている点が注目されている。

CESA(東京ゲームショー主催団体)による業界レポートの速報によれば、国内ゲーム企業の約51%が開発業務にAI/ジェネレーティブAIを何らかの形で採用しているという調査結果が示され、ビジュアル資産生成やテキスト、コーディング支援などの用途が多いと報告されている。開発側のAI採用は“当たり前”に近いステージに入っている。

会場で目立った“AIデモ” — デジタルヒューマンと対話型キャラクター

TGSのビジネスデイでは、クラウド+AIソリューションを手がける企業が目立つ展示を行った。たとえばUbitusは、AIキャラクター作成プラットフォーム「UbiOne」や、8K相当の高精細デジタルヒューマン「UbiChan(UbiReal)」、さらにAIヒューマノイドのデモを披露し、リアルタイム対話や多言語対応などをアピールした。これは、“ゲーム内の会話型キャラクター”や“イベントでのAIアトラクション”など、プレイヤーとの接点がクラウド経由で高度化する実例として注目に値する。

また、ソニー内部でのAIキャラクター実験など、ゲーム中のキャラクターを自然言語で会話させる試みが報じられており(プロトタイプ段階ながら注目度は高い)、これらはTGS潮流と符合する動きだ。

開発ツール/エンジン側の変化 — MetaHumanやエンジン統合で制作が早くなる

UnrealやUnityといった主要エンジンは、AIやデジタルヒューマン関連機能を積極的に強化している。EpicのMetaHumanやUnreal側の最新機能は、リアルな表情やモーションを簡便に制作できるようになり、制作工数を大幅に削減する方向へ向かっている。Unityもエンジン側にAI支援ツールやワークフロー改善を進めており、開発者がAIを「補助ツール」として取り込みやすい環境になりつつある。こうした改善は、少人数スタジオでも短期間で高品質な表現に到達できる土台を整える。

プレイ体験としてのクラウド進化 — ストリーミング性能と即時性の向上

クラウド側のインフラやサービスも進化している。GeForce Nowのような大手クラウドゲーミングはGPU世代の更新で性能と機能(例:Neural Rendering / DLSS世代の進化)を取り込み、より高フレームレート・高画質での配信を実現している。さらにプラットフォーム事業者(例:Microsoft/Xbox)はTGS期間中の放送や発表でクラウド関連の施策やラインナップを打ち出し、クラウドでのプレイを前提にした展開を強化している。これにより「手元ハードの性能に依存しない」体験提供が現実味を帯びてきた。

AI/クラウドの組み合わせで可能になるのは、単なる画質向上や作業効率化だけではない。プレイヤーごとに応答を変えるNPC、プレイ履歴を踏まえたパーソナライズされた物語展開、リアルタイムで生成されるイベントやクエストなど、コンテンツが「静的ではなく動的に生成され続ける」方向が見えてきた。Ubitusのデモが示すような高精細な対話型キャラクターは、ゲームと配信・PR・メタバース的体験の境界を曖昧にする可能性がある。

開発現場の“得るもの/失うもの” — 実務的なメリットと倫理課題

実務面では、AI導入によりテクスチャ生成・シナリオ草案・コード補助などの工程が効率化され、開発コストやスケジュールの見直しが可能になった。一方で著作権やデータソースの問題、音声や俳優の扱い(SAG-AFTRAの交渉や合意のような事例)など、倫理的・法的なガードレール整備が不可欠だ。業界全体で合意形成と透明性の確保が求められている。

今後の示唆(開発者・事業者・プレイヤー向け)

以下はTGS2025の流れから導いた実務的な示唆だ。

  • 開発者向け:AIツールは“仕事を奪う”から“生産性を飛躍的に上げる”フェーズへ移行している。ツールの選定とデータポリシーの整理(学習データの出所確認等)を早めに行うべきだ。

  • 事業者(パブリッシャー)向け:クラウドとAIを組み合わせた“常時進化するサービス”設計が競争力になる。インフラ投資と運用コスト試算を踏まえた長期戦略が必要だ。

  • プレイヤー向け:体験はより個別化・鮮明化する一方で、データの扱いや「AI生成であることの表示」に注意を払う必要がある。消費者側のリテラシーも重要だ。

結論:TGS2025は変化の“加速点”だった

TGS2025を通して見えたのは、AIとクラウドが“いつか来る未来”ではなく「今、進行中の現実」であるということだ。制作現場のワークフローから、エンジンやツール群、そしてプレイヤーに届く体験まで、あらゆるレイヤーで変化が起きている。企業は技術を取り込むと同時に倫理・法整備や運用設計を怠らないことが鍵になる。プレイヤー側も新しい体験を享受しつつ、透明性や安全性に注目していきたい。