M5チップ搭載MacBook Pro / iPad ProはAI性能が大幅向上?何ができるのかを解説

  • 2025年10月17日
  • 2025年10月17日
  • iPad, Mac

Appleが公表したM5は「AI(機械学習)性能を大きく強化した次世代チップ」として発表されました。この記事では公式情報や主要メディアの報道をもとに、M5のスペック的な特徴が実際のワークフローで何を変え得るのか、MacBook ProとiPad Proそれぞれの用途的な違いや注意点まで、できるだけ分かりやすく整理して解説します。

M5が目指す「AIファースト」な設計とは

Appleの説明によれば、M5は第3世代の3nmプロセスで製造され、10コアGPUに「各コアにNeural Accelerator」を備えた次世代GPUアーキテクチャ、強化されたCPUコア、16コアのNeural Engine、そして統一メモリ帯域の増加(約153GB/s)を特徴とします。

これにより、GPUを用いたAIワークロードのピーク性能がM4より数倍(AppleはGPUベースのAIで4倍以上、iPad向け発表では最大3.5倍のAI性能改善を明記)向上したとされています。こうした数値は同社のベンチマーク条件下での比較値ですが、方向性として「ローカル(オンデバイス)での推論/生成処理をより実用的にする」ことが狙いです。

技術的に何が変わったか

  • GPU内部にNeural Acceleratorを統合:GPUコアごとに専用アクセラレータを設けることで、従来はCPU/Neural Engineへオフロードしていた処理をGPU寄りにシームレスに動かせるようになり、並列処理が効くAIワークロード(例えば画像生成、ビデオマスク、リアルタイム推論)で大きな利得が期待できます。

  • 強化されたNeural Engine(16コア):従来のNeural Engine性能向上により、軽量〜中型のモデルを低電力で高速に動かせます。

  • メモリ帯域と統合メモリの改善:大きなモデルデータや高解像度データを扱うときのスループットが向上し、生成系や編集系アプリでの待ち時間が短くなります。

上記により「従来クラウド頼みだったいくつかの処理が、ラップトップやタブレット上で現実的に実行可能に近づく」点がM5の大きな意味です。

具体的にどんなことが高速化・現実的になるか

  1. 拡張現実/ビデオ編集でのAI処理(例:ビデオ内マスクや自動背景分離)

    DaVinci Resolveなどのプロ向け編集ソフトで、AIベースのマスク生成やトラッキングがよりリアルタイム寄りに動き、編集中の待ち時間が減ります。Apple側でもビデオマスキングや生成系アプリ(例:Draw Thingsのような拡散モデルを使った画像生成)の事例を挙げています。

  2. オンデバイス画像生成(拡散モデル)

    画像生成系のモデルは従来GPUメモリや演算量の都合で高性能PC/クラウドが必要でしたが、M5では「軽量化された拡散モデルや最適化された推論パイプライン」を使えば、iPadやMac上で短時間に満足できる生成結果が得られやすくなります。これはクリエイティブアプリのワークフローを変える可能性があります。

  3. ローカルでのLLM(小〜中規模モデル)実行・高速化

    大型の最新LLMをフルでローカル実行するのは依然として厳しいですが、数百〜数千億パラメータ未満の最適化モデルや量子化されたモデル、プロンプト前処理や要約などの補助的処理はデバイス上で十分実用範囲に入ります。これにより「プライバシー保護された簡易アシスタント」やアプリ内の高速補助機能が向上します。Appleの「Apple Intelligence」対応方針とも親和性があります。

  4. リアルタイムなクリエイティブ支援(Photoshop系のフィルタや音声処理)

    画像補正、自動タグ付け、ノイズ除去、あるいは音声の低遅延処理といった部分処理は、より低レイテンシで使えるようになります。プロの現場で「その場で確認して修正する」フローが増える期待があります。

MacBook Pro と iPad Pro、どちらで何を選ぶべきか

両機種ともM5を搭載しますが、用途によって選び方が変わります。

  • MacBook Pro(14/16インチ):長時間の持続性能、拡張I/O(外部GPUや多数のストレージ)が必要な重たいクリエイティブワーク、複数アプリの同時実行、大規模データを扱う開発やレンダリングにはやはりMacBook Proが向きます。冷却と電力の余裕がある分、持続的なAI負荷をかけやすいのが強みです。

  • iPad Pro(11/13インチ):タッチ/ペン操作や移動中のクリエイティブ、現場でのスケッチ→生成→微調整、といったフローに圧倒的に便利です。N1無線チップ搭載など周辺機能(Wi-Fi 7、Thread等)によってスマートホーム連携や外部センサーとの連携も広がっています。外で手軽にAIツールを使いたいクリエイターには大きな魅力です。

制約と現実的な限界(過度な期待への注意)

M5は確かに「オンデバイスAI」の取り回しを劇的に改善しますが、いくつか押さえておくべき制約があります。

  • 巨大な最新LLMや超高解像度の長時間ビデオ生成はクラウドが依然有利:モデルサイズやメモリ要件でどうしてもクラウド依存が残るケースがあります。

  • 熱設計(サーマル)と連続負荷:ラップトップやタブレットはデスクトップ/クラウドほど無制限に高負荷を入れられません。ピーク性能は高くても、持続的な重負荷ではスロットリングが入る可能性があります。

  • アプリ側の最適化が追いつくか:ハードが先に出ても、各ベンダーがCore ML/Metal向けに最適化したアプリを出すまでは恩恵を十分に受けられない場合があります。

まとめ — M5で現実的に何が変わるのか

短くまとめると、M5は「より実用的なオンデバイスAI」を広げるエンジンです。画像生成や動画のAI編集、軽量〜中規模の言語モデルのローカル実行、クリエイティブ支援ツールの低レイテンシ化など、クラウドに頼らずに高速で処理できるケースが増えます。

一方で、超大型モデルや継続的に高い演算を必要とする処理は依然クラウドや更に大きなマシンの領域です。用途に合わせてMacBook ProとiPad Proを選べば、クリエイティブの現場は確実に変わっていくでしょう。